ぐわぐわ団

ぐわぐわしたり、もんにょりしたり

やりたいことがあるんだけど……

よく若手の漫才で「やりたいことがあるんだけど……」という入り方をしますよね。

「なんなん?」

「刑事ドラマで張り込みとかあるやん、あんなんやってみたいねん!」

「じゃあやろか!」

そんなわがままを舞台の上で許してはいけないのではないかと思うのです。

もっと、自制心を育まなければなりません。しかも、プライベートな場所であるならいざしらず、舞台の上という公共の場所です。多くの人の視線が注がれている場所で、突然「やりたいことがあるんだけど……」と言い出す神経をまず疑うのですが、それ以上に横で立っている人がピシッと止めなければいけないのではないでしょうか。舞台の上で二人で横に並んで立っている以上、配偶者か、兄弟か、親子か、そういった近親者であるのでしょう。きちんと「躾」をしないといけないのです。

「躾」という字は身体の身に美しいと書きます。しつけができている人は見ていて気持ちがよいものです。舞台の上で立つ人間は清廉潔白でなければいけません。見ていて清々しくなければいけません。何を血迷って「やりたいことがあるんだけど……」なのか。人として、恥を知れと言いたい。やりたいことがあるのであれば、舞台の上で突然発表するのではなく、人知れず隠れて努力を続けて、技術を磨き、ここぞという時に始めて「やりたいことがあるのです」と記者会見をするぐらいでなければ、そういう覚悟がなければ、決して発してはいけない言葉なのです。

漫才を見続けて85年。横山エンタツ、花菱アチャコから始まった「しゃべくり漫才」こそ、漫才の真髄であると考えております。芝居的要素を多分に含む「コント漫才」は若手にとっては演じやすく、ウケやすい手法であるがゆえに、多くの漫才コンビが「コント漫才」に流れていってしまいますが、やはり話芸としての漫才を追求するのであれば、安易にコントに走るのではなく、じっくりとしゃべりを極めて欲しいと思うのです。

にも関わらず、「やりたいことがあるんだけど……」と、初手から「しゃべくり漫才」の芽を摘むかのような入り方をしている若手漫才師にそろそ鉄槌を下さねばならんのではないかと思うようになり、漫才を見続けて85年、ついに筆をとった次第であります。

このようなブログという晴れやかな場所において、真の漫才とは!みたいなオピニオン記事を書くことは恐悦至極にございますが、老骨に鞭を打ち、今回の脱稿となりました。老骨に鞭を打ったらバラバラに砕けた感じです。合掌。

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