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読んで損する楽しいブログ

『最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常』を読みました

私の大好きな作家・中島らもは、灘高から大阪芸大という経歴をお持ちでした。らもさんのエッセイを読んでいると、高校までの思い出話はいろいろと書かれているものの、大学の話になると、途端に数が少なくなるんですね。ほとんど大学に行かなかった、2時間かけて大学に行ったら休講だった、釣りをしている学生を眺めてた、等々。

私自身は、とある単科大学に通っていたのですが、これまた大学の周りには何にもなくて、授業に出るか、部室でカップラーメンを食べるか、それぐらいしかすることがないところだったので、あんまり遊んでたという感じでもなく、そこそこ真面目な大学生でしたとしか言いようもないわけで。

大学というのはウェイウェイしたもんだと思っていたけど、意外と質素なものだというのが、自分自身の経験だったり、中島らもの本を読んでの感想。

それはそうと、ふとしたことで手にした本『最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常』ですが、なにぶん大阪の人間なもんで、東京藝大のことは詳しく知りません。本の帯には、東大よりも競争率が高くて、卒業後は行方不明者多数なんて書かれていて、これまたさっぱりわけがわからない。どういうこっちゃと思いまして、とりあえず読み出したら、これがまあ面白いこと。

この本の著者である二宮敦人の奥さんが東京藝大の学生さんだそうで、最初は奥さんの生態の紹介から始まります。大きな木彫りの陸亀を作り、甲羅にフェルトを貼ろうかどうか悩みだす。何のために?と聞くと、「亀に座れたら楽しいからねえ」という、あまりにものんきな返答。

案外こんなものらしい。

という著者の半分呆れたような、感心したような、つっけんどんな一文でクラッときてしまい、この本を購入してしまいました。体に半紙を貼り始める妻、ガスマスクを売る生協、これまた素っ頓狂なエピソードが「はじめに」からわんさかと。

とはいえこの本、こんな想像を絶する話ばっかりなのかというと、そういうわけでもなく、途中から繰り広げられる藝大の学生さんのインタビューをもとにした文章が、めっちょこ面白いのです。東京藝大は美術学部と音楽学部に分かれており、これまた双方個性が違いすぎて同じ学校でこんなに違うの?という驚きと、最後はその違いも根本的なところで同じだったりする驚きがあったり、ついつい芸術家と言えば想像してしまう「芸術は爆発だ!」みたいなノリもあるけど、そういうわけでもなかったり、でもやっぱりちょっと違うよねという面白さがあったり。

芸術って聞くと、ちょっと物怖じしてしまいがちですが、そんな人こそ、この本で芸術を志す人がどんな人たちなのか、ちょっと覗いてみたらいいんじゃないかなと思いました。東京藝大そのものを紹介するというより、東京藝大という場所にいる人たちを紹介する本です。面白いのは場所ではなく、人なんです。

なんだか人気のある本のようで、Amazonでは「通常1~2か月以内に発送します。」という状況。私は近くの本屋さんで買いました。一応、リンクを張っておきましょう。

 

最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常

最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常

 

 

というわけで、さきほど読み終えた本の紹介でございました。合掌。